それはクゥカンパニーさんの舞台「デッドエンドインザ廃墟」を見た帰りの事だった。
﹙この日のメンバーは丸山さん、宏香さん、大木さん、英くんと私﹚
今から帰ると徳島に着くのは夜になる。舞台の前に皆でうどんを食べはしたのだが、帰る頃には腹ペコになりそうだ。ならばせっかくだしこっちで何か食べて帰ろうという感じになった。
帰りの車の中で舞台の感想を話しながら何を食べるか相談する。
愛媛まで来てマックやモスは流石に無いし、かといっていいお店を知っている訳でもない。
こんなときにスパッと決めてくれそうな丸山さんは運転中だし、そもそも食べても食べなくてもどちらでもいい派だったので「高速に乗るまでに決めてねー」といった感じだった。
なかなか決まらないなか、私もマップで色々見ていたのだがその中で一際目を引く写真を見つけた。
﹙このもやしの量は……そういや徳島でこんな感じのラーメン屋行ったことないな……﹚
そこにはもやしが高く盛られたラーメンの写真があった。
クチコミも悪く無さそうだし、いい感じだ。
「あのこんな感じのラーメン屋があるみたいですが………」
皆に提案してみる。
ちょうどICの近くだったし、他にいいお店も見つからなかったので、じゃあそこでとあっさり決まったのだった。
骨太味覚 井門店
外の看板には「創業1999年」の文字が。
「なんか割と新しい感じがするけど20年やってるのか」
「なんか北斗の拳を思い出した」
なんて感じの会話をしながら、骨太と言うわりにはおしゃれな玄関をくぐった。
「いらっしゃいませー」
座敷席に通されメニューを貰う。
「あちらの看板のトッピングは無料になっております」
看板を見ると背脂、野菜、ニンニク、魚﹙鰹節﹚のトッピングがあった。
﹙ふーむ、チャーシュー麺の野菜カチ﹙大盛りの事﹚にするとしてご飯はどうしようかな……﹚
私はだいたい替え玉とか麺大盛りにするよりはご飯をつける。
このお店も大盛りや漢盛り﹙どんな盛りだろうか…﹚があるみたいだが、つけるならばやっぱりご飯だ。だが、写真の感じだと野菜だけでもなかなか苦しい戦いになりそうである。
周りを見ると皆大体決まったようだ。
大木さんはまだ迷っているようで、いつもの「背水の陣」﹙店員を呼び、皆の注文が終わる迄に決める技﹚を発動していた。
私も店員さんがくるまでの間悩んでいたが、ふとご飯と煮卵のお得なセットを見つける。
その瞬間、私の心は新緑の季節に相応しい青空のように晴れ渡ったのだった。
「チャーシュー麺の野菜カチ。Aセットで」
全員の注文も終わり、皆で会話の花を咲かせていると、ほどなくしてラーメンが運ばれてくる。
丸山さんは野菜ちょいカチにニンニクと背脂を足したガッツリ系。宏香さんは普通のラーメンの野菜ちょいカチ。大木さんは自家製ラー油の赤ラーメンに野菜ちょいカチ。英くんは味噌ラーメンを頼んだのだが、間違って別のラーメンがきたので作り直して貰うことになったのですこし出遅れる事になった。
﹙では……いざ勝負!﹚
謎の気合いを入れて自分のラーメンと向き合う。
カチカチに盛られた野菜﹙大体もやし﹚を崩すと完全に麺が隠れてしまった。
﹙これは……あれか。上の野菜に時間を掛けると麺が汁を吸って大変なことになるやつだな!﹚
何かで得た知識を元に野菜に隠れた麺を引っ張り出しながら食べ進めていく。
気が付けば周りの皆もいつもより口数が少ない。味は良いのだが、ちょいカチでもなかなかの量なのが効いているのか……
特に宏香さんは「もやしが全然無くならないー」とくじけそうになっていたが、丸山さんのアドバイスもあってなんとか喰らいついていく。
私もなかなか消えないもやしと戦いながら黙々ともぐもぐしていく。
ずっ、ずずっ。 バリバリ。もぐもぐもぐもぐ………
私は麺を啜る音ともやしの歯ごたえの音のハーモニーを奏でながら、今日見た舞台の事を反芻していた。
私は舞台を見るときに油断すると直ぐ気が散ってしまうのだが、今回はずっと舞台に集中して観ることが出来た。
至る所に散りばめられたネタに読めそうで読みきれない展開。ホロリとくる場面もあって衝撃のラストが締め括る。
共演した事のある立木さんと上松さん﹙どちらも台詞のやり取りはなかったが……﹚以外はあまり知らない役者さんばかりだったけど皆とてもいい味を出していて、また観たくなるとても良い舞台だった。
﹙そういえばアンケートで立木さんに触れるの忘れてた……立木さんごめんなさいorz﹚
気が付けばほとんどの麺ともやしをやっつけて、残るは煮卵とチャーシューとご飯が残るのみ。
﹙お腹の具合は………問題なし!﹚
こうなったら後はボーナスタイムだ。間で卵を齧りながらチャーシューとご飯を頬張っていく。
周りの皆も大体方が付いたようだ。途中苦戦していた宏香さんもなんとかなりそうだ。
こうなると自然と会話もまた咲いてくる。
普段は一人でご飯を楽しむ私だが、こんな感じに皆と一緒に食べるのもやっぱりいいなと思う。
「ごちそうさまでした」
無事宏香さんも完食できた。皆も味に満足できたみたいで良かった。
会計を済ませ、お店を出たところで丸山さんに「この店は星いくつ?」と質問された。
「うーん、星4つですかね」
私はなんとなく通ぶって答えた。
直ぐ隣のコンビニに寄った後もう乗りなれた赤いデミオに皆で乗り込む。
今日の舞台の話にまんまるや徳島演劇ネットワークのこれからなど、徳島迄の帰り道の間、また皆で会話の花を咲かせるのだった。