にく部発足!
――焼肉ポリス警視監、プレミアムコース、きんぐカルビ16枚、そして「楽しいっすね。」
劇団まんまる肉部が発足した。
最初から「部」を作ろうとしていたわけではない。
会議もなければ、決議もない。
ただ、「肉、行きません?」という一言が、静かに共有された結果だった。
芝居をやっていると、どうしても頭が前に出る。
考える。
判断する。
選択する。
正解を探す。
その連続だ。
だからこそ、ときどき必要になる。
考えなくていい時間。
役でも立場でもなく、
ただ腹を満たすためだけに集まる時間。
それが、にく部だ。
第一回・参加メンバー
メンバーは、丸山、うど、大輔。
女子部員はポチとまっすー。
※勿論、もりのメンバーの合流も近いと確信している。
ただし今回は、まっすーが来られず、
記念すべき第一回は四人での活動となった。
少し残念ではあったが、
その不在は最初から「次がある」ことを前提にしてくれたようにも思う。
場所は焼肉きんぐ。
理由は明確だ。
高すぎず、安すぎず、
黙っていても、喋っていても成立する空気がある。
正にキング。
プレミアムコースと、ソフトドリンク飲み放題
この日の注文は迷わなかった。
プレミアムコース。
そして、ソフトドリンク飲み放題。
遠慮しないため。
我慢しないため。
最初から、全力で食べるためだ。
だが、この夜を決定的に特別なものにしていたのは、
この注文内容そのものではない。
それは、50%引きクーポンの存在だった…。
焼肉ポリスという階級社会
――そして警視監という立場
焼肉きんぐには、通えば通うほど階級が上がっていく
――焼肉ポリスという制度がある。
最初は誰でも巡査だ。
ただ肉を食べ、満腹になって帰るだけの存在。
だが、通い続けることで、
ある日ふと、階級が上がっていることに気づく。
私は、特別なことをしていたわけではない。
派手な注文をしていたわけでもない。
ただ、淡々と通い続けていた。
大抵は一人で。
土日のランチに。
どうしようもなく一人の夜に。
肉を焼き、
カルビを頼み、
網を替え、
満腹になって帰る。
それを、何度も繰り返した。
気づけば、
私は焼肉ポリス・警視監へと昇進していた。

警視監。
肉の世界とは思えない肩書きだ。
だが、その立場は、単なる称号ではない。
それは、
「きんぐを理解している者」
「この店のリズムを知っている者」
としての、信頼の証でもある。
そして、その階級に与えられた報酬が、
プレミアムコース50%引きクーポンだった。
一番高いコースを、半額で。
それは偶然でも、ラッキーでもない。
通い続け、食べ続けた者だけが辿り着ける、
焼肉階級社会の頂点からの恩恵だ。
同時に、それは責任でもあった。
警視監として、
この夜を失敗させるわけにはいかない。
肉部の初回。
プレミアムコース。
半額クーポン。
すべてが揃っている以上、
内容が伴わなければならない。
想定より遅い提供スピードと、速すぎる食欲
入店した時間帯は、ちょうどお店のピークだった。
店内は混み合っていたが、
決して「肉が来ない」わけではなかった。
ただ、
こちらの食べるスピードに、提供が追いついていなかった。
オーダーすれば来る。
だが、焼いて、食べて、
「次、行こう」と思った頃に、
ようやく次の皿が届く。
最初の30分。
テーブルには網があり、火がある。
だが、警視監としては、
このテンポのズレが少し気になっていた。
プレミアムコースは時間制限がある。
半額とはいえ、
時間を無駄にしたいわけではない。
頭の中では、
「後半で巻き返せるか」
「ここから流れを作れるか」
そんな計算が、自然と走っていた。
若干の失望。
鵜戸の表情を私は見逃さなかった。
だが、口には出さない。
警視監は、場を乱さない。
不思議なことに、
誰一人として不満を口にしなかった。
文句もない。
催促もない。
ただ、話をしながら、
火を見つめて待つ。
この空気を見て、
私は少し安心した。
警視監としてではなく、
劇団の座長として。
彼らはエンターテイナーだった。
後半、一気に噛み合い始める
後半、流れははっきりと変わった。
こちらのペースと、
店の提供スピードが、
少しずつ噛み合い始める。
肉が途切れなく届く。
網が空かない。
焼く、食べる、次を焼く。
――来た。
流れができた瞬間だ。
厚切りタン。
噛んだ瞬間に、音がする。
みすじステーキ。
火を入れすぎない緊張感。
大判上ロース。
一枚で場の空気を変える存在感。
どれも文句なく美味しい。
だが、最終的にテーブルを支配したのは、
やはりきんぐカルビだった。
きんぐカルビと、サンチュという完成形
派手さはない。
だが、完成度が高い。
脂と赤身のバランス。
焼いたときの香り。
タレとの相性。
そこに、サンチュ。
包む。
食べる。
次を焼く。
結果、
四人で16枚のきんぐカルビ。

警視監として、
この数字には納得している。
まっすーが来ていたら、
間違いなく記録は更新されていた。
それもまた、次回への期待だ。
「楽しいっすね。」
そして、この夜、
一番印象に残った瞬間。
いつもは比較的無口な鵜戸が、
ぽつりと、こう言った。
「楽しいっすね。」
警視監の肩書きも、
肉の枚数も、
その一言の前では意味を失った。
ただ、
人が集まり、
同じものを食べ、
同じ時間を過ごした。
それだけで、
確かに楽しかった。

にく部とは何か
にく部は、芝居のための集まりではない。
だが、芝居を続けていくために必要な場所だ。
肩書きを外し、
役を降ろし、
ただの人として、同じ肉を食べる。
その時間が、人を軽くする。
結果として、劇団を強くする。
劇団まんまる肉部。
第一回活動は、
文句なしの成功だった。
次はもっと多くの人数で。
次はもっと食べて。
次は、また新しい言葉が生まれる。
お知らせ:2月8日「徳島の記憶」
最後にひとつ、お知らせを。
**2月8日、「徳島の記憶」**が開催されます。
徳島で生きてきた人たちの記憶。
街に残る風景。
何気ない日常の中の、小さな物語。
それらを掬い上げ、
今につなげていくイベントです。
肉を食べて笑い合ったこの夜も、
やがては誰かの「徳島の記憶」になる。
そんな視点で、
ぜひ参加してもらえたら嬉しいです。

