短い期間でしたが、濃い時間の公演でした。
徳島演劇ネットワーク第7回合同公演「パンドラの鐘」
ご来場頂いた皆様、応援して下さった皆様、一緒に舞台を作り上げてくれたメンバー、お手伝いしてくれたメンバー、本当にありがとうございました。
この「パンドラの鐘」という作品には、以前ブログにも書きましたが17年前に出会いました。
その時は、ヒメ女の物語に興味津々な女の子タマキという役でした。
時を越えて、そのタマキが追いかけるヒメ女役を得る事になるとは想像もしておりませんでした。
もうアラフォーなのに14歳の女王役ですよ。
最近、演劇の舞台に立つ度に感じるのが、年齢と衰えです。
でも、今回、その限界点に挑戦出来たと思います。
お母さん役以外もまだ出来そうな気がする、きっと出来る。
今回演じるにあたって、意識したのは「ヒメ女の無邪気さと強さ」です。
ヒメ女が恋する葬式屋ミズヲや鐘を見て純粋に驚く樣、びっくりする様、駆け回る様、それらを素直に出しました。
一方で、女王を名乗って以降は凛とした姿勢や目線を意識しました。
そういったヒメ女らしさは私の演技だけでは表せない。
助けて貰った内の一つは、衣装です。
真っ赤なスカートは社交ダンス用のスカートでしたので、回ると花が咲いた様に広がります。活き活きとした姿を見せました。
そして黒字に金の刺繍を施した帯をリメイクして作ったビスチェは、身体にぴったりと沿う形で、女王としての気品と縛りでもありました。
このビスチェを作ってくれた衣装担当のぼうちゃんには本当に感謝してもしきれません、ありがとう!
そして、演技の内面を支えてくれたのは小川君演じるミズヲの存在です。
常に新鮮な気持ちでセリフを吐ける様、馴れ合わないよう普段から少し気を遣っていました。
彼のミズヲとしてのカッコ良さは、ヒメ女だけじゃ無くお客さんも心射抜かれたでしょう、さすがの説得力です。
もう1人のヒロイン、ですやん演じるタマキとは、常にヒメ女と対比する存在として映る様、立ち位置や表情を工夫しました。
そうする事により、ヒメ女の想いがより切なく、哀しく伝わると考えたのです。
ラストのセリフは最後まで迷いました。
とても悲しく重い決断をするヒメ女、稽古では感情が昂り過ぎて言葉が続かない位泣いた時もありました。
演者の涙は観客を泣かせないのは百も承知です。
それでも、稽古で泣くまで芝居を煮詰めないと、その上の段階には行けないのも実感していました。
1週間前くらいに演出補のおーきさんと話して出てきたイメージが決め手となり、届くセリフが吐けたんじゃないかと思います。
珍しく自分の役作りを細かく書いてみました。
どんなに考えてもお客さんに伝わるのは数%。
それでも!
役者は舞台で考える事をやめてはいけない。
その瞬間、お芝居は死にます。
何度も何度も稽古をし、感覚を確かめ、伝わり方を考える。
何て楽しいんでしょう。
役者としてこんなに楽しかったのはなかなかありません。
単に公演の思い出や余韻に浸ってるのでは無いです。
それだけこの役に没頭したんだからなかなか抜けないんだと思います。
こんなに楽しい思いをさせてくれたのも、ひとえに演出のユッキーナがこの脚本を選んでくれたからです。
本当にありがとう。
全部終わって、打ち上げの後、自転車を漕ぎながら口ずさむのは大好きなセリフ。
『どこにも帰りたくない音なの。
ふらふら世界をさまようの。
立ち上る煙の様に、曖昧に天に向かって溶けて行く』
私のヒメ女は、まだ帰りたくないと言っています。
しばらく、彷徨いそうです。
いつだって、心は金に童。