忽那・地獄の漢飯(おとこめし)act.3

これは、芝居と食に命を懸けるまんまるの漢達の情熱の記録である。

 

あらすじ
元来食の好みも食べる量もジジイのそれと言われる
善良な愛媛県民・忽那は、徳島に行く度、
まんまるの漢達に無謀とも思える食事(漢飯)に誘われ続けている。
稽古と移動で身も心も枯れ果てた忽那の胃袋を漢飯は容赦なく傷つけ、
徳島に行く度幾度となく繰り返されるその地獄の苦しみから、
いつしか忽那は、徳島県をこう呼ぶのであった。
――煉獄、と。

 

 

今回の登場人物

丸山(38)

座長。漢飯界の熱き闘将。漢飯地獄の元凶。ゴールド肉マイレージカード保持者。上下関係のない風通しの良い劇団作りを目指しているもどこか先輩体質。ちょいポチャ。(写真左)

忽那(33)

俺。漢飯界永遠の補欠。漢飯地獄の被害者。毎月180本(7ケース)のビールを購入。年功序列など体育会系的なノリを嫌っているが誰よりも後輩体質。ヒョロガリ。(写真右)

 

 

――2020年11月某日

その日、四国劇王の稽古のため徳島を訪れ丸山家に宿泊していた忽那。
午後からの稽古に備え、丸山と忽那は銭湯を訪れ、昨晩摂取しすぎたアルコールを抜いていた。

 

かぽーん。

丸山「いやー、いい湯だが若干熱いな。お先に上がるよ。」
忽那「あ、はい。」
忽那(ああ…!やはり座長は風呂も早い…!俺はまだ体を洗っている段階、湯舟にも浸かれていないと言うのに…!しかし座長を待たせるわけには行かない…俺ももう出るか…)※忽那の風呂時間平均:50分

忽那「お待たせしました」
丸山「うん」
忽那(湯船に浸かれなかったからか、アルコールが抜けきってないよ…)
丸山「よし、じゃあ昼飯食いに行くか」
忽那(この流れは漢飯…!まずい、まずいぞ…昨日のビール摂取量はおよそ3750ml…胃の調子は中の下といったところか…)
忽那(このコンディションでは漢飯はまずい…せめて麺類…麺類ならなんとか…)
丸山「今日の昼飯はつけ麺だ」
忽那「つけ麺…?」
丸山「そう、『つけ麺AS〇HI』だ」
忽那(つけ麺か…食べたことないな…胃のコンディションとしては蕎麦かうどんがベストだが、とりあえず麺は麺だ、とりあえずは一安心といったところか…)

 

~忽那・地獄の漢飯「つけ麺AS〇HI編」~

 

忽那(ここがA〇AHIか…花輪が置いてある…オープンして日が浅いということか…)

川沿いにひっそりと佇むその店は真新しく、綺麗に塗り固められた純白の外装が目に眩しい。
店内は奥まっており外からでは客席規模はわからない。
そしてすでに満席のようで数人の客が列をなしている。

若干の待ち時間の後、店内に通される。
忽那(店員さんは…よし、可愛いぞ…その上忽那好みのちょいポチャだ…制服のサロペットが魅力をさらに引き立たせている…)※主観です
忽那(それにしても綺麗な店内だな…出来立てということもあるが造りがオシャレだ…カウンターを基調としてテーブル席は少な目…確かにおひとり様もちらほらいるようだ…)
忽那(しかし基本的な客層はカップルのようだ…むしろほぼカップルだ…おっさん二人で来る店ではないのかもしれない…ああ、周りの目が気になる…)

店内はL字型になっており、入り口から最も奥まったカウンター席に案内される。
忽那(さて、メニューだ…やはりビールはアサヒか…店名でもあるし、まあ妥当だな…あれ?座長がめずらしくしげしげとメニューを眺めている…)
忽那(そうか…座長も初めて来る店なんだ…これはいいぞ、フォローウィンドだ…座長行きつけの店であるならばギットギトのベットベトの漢飯は免れないが、初めての店ならば座長の意図とは関係なく忽那好みのサラっとした飯が出てくる可能性もワンチャンある…)



店員「ご注文はお決まりですか?」
丸山「つけ麺、大盛で」
忽那(やはり大盛か…量も味もわからぬ初めて来た店でいきなり大盛を頼むその堂々たる姿…さすが座長だ…俺はどうする…小盛りはないのか…仕方ない、初めてのつけ麺で若干不安はあるが、普通盛りを頼むか)
忽那「瓶ビールと、つけ麺、普通サイズで」
店員「かしこまりました」

 

丸山(ウズウズ)
忽那(丸山さんがウズウズしている…しかし俺もだ…初めてのつけ麺…中華麺を「たれ」にディップするスタイルと聞き及んではいるが…ざるそば大好きの俺としては親近感を覚えるな…)

 

店員「おまたせしました、つけ麺大盛とつけ麺普通サイズと瓶ビールです。」
忽那(きた…!どれどれ、つけ麺とはどんなものか…な、なにィーーーー!!!!)

忽那(半端ねえ…!半端ねえ麺量…!!)※例によって写真無し

忽那(なんだこれ、大盛と間違ってるんじゃないのか…いや、座長の方がはるかに多い…ということは、これが普通サイズなのか…そしてこの麺の太さ…!うどんだ…!これは最早うどんだ…!くっ…あまりうどんは得意ではないのに…)※忽那の麺類ランキング:うどんは7位

忽那(バグってやがる…それがこの店の人間の脳の問題か、徳島県民の胃袋の問題かはわからねえが、これを、このサイズを普通サイズとして提供するなんて…バグってやがる…食えるのか、これを…俺が…食いきれるのか…不安だ…いや、諦めるのはまだ早い…!)

忽那(「たれ」だ…!「たれ」さえあっさり系ならまだ可能性はある…!例えば俺の好物、蕎麦の蕎麦つゆのようなあっさりした「たれ」ならばなんとかいけるはずだ…)※忽那の麺類ランキング:蕎麦は1位

忽那「いただきまーす!たれをつけて、と…ズルズル!」

忽那(こ、濃いィーーーー!?!?なんだこの「たれ」は…!濃すぎる…!濃厚を通り越して最早重厚だ…!ドロッドロじゃないか…濃い、図らずもビールが進んでしまう…ん?「たれ」の中にチャーシューが入っている…そうか、つけ麺とは「たれ」の中に具を入れるのか…そしてその具の旨味がこれでもかと「たれ」に染み出してこの濃い味になっているのか…)

忽那(…バグってやがる…この異常なまでの「たれ」の濃さ…これがつけ麺の普通なのか徳島県民の味覚がイカれてやがるのかは定かではないが…バグってやがる…)

忽那(これはきつい…この麺量と太さ…そしてこの「たれ」の濃さ…二日酔いの体には死ぬほどきつい…ビール…そうだ、ビールで流し込むんだ…ビールはどんな食材にも合う万能飲料…神の作りたもうた命の水…)※二日酔いでもビールは美味い=神

忽那(ビールで無理やり麺を流しこめば…ああ…!ビールがもうない…!濃すぎる味をかき消そうと飲みすぎたんだ…凡ミス…!どうする…?)
丸山「ごちそうさまでした」
忽那(な、なにィーーーーー!!!)

忽那(一瞬…!まさに一瞬…!速すぎる…流石だ…麺類だけはスピードスターのうどさんを上回るスピードで食えると聞いてはいたが…麺は飲み物と豪語するだけのことはある…)※うどさんはファンタジスタとスピードスターの二冠王

忽那(待て…!これは…この状況は…!先ほどの風呂屋と同じ状況…!!先輩であり座長である丸山さんが待っている…俺が食い終わるのを待っている…!!急がねば…)

忽那(早く食わねば…ああ、座長がスマホで大富豪を始めてしまった…ソリティアなんて人間が退屈を極めしときにしか楽しめないゲームじゃないか…急がねば…早く食わねば…どうする、俺…!!)

 

忽那「…すいません!ビールもう1本!!」

 

 

忽那の地獄は続く――※ビールのおかげで完食できました

 

 

おまけ
忽那の麺類ランキング
1位:蕎麦
2位:パスタ
3位:ラーメン
4位:素麺
5位:焼きそば
6位:きしめん
7位:うどん

 

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