いつでしたか、あの子はプツリと張り詰めた何かが切れてしまったように大泣きしました。
「演劇はなんにでもなれるんじゃなかったんですか?わたしはなりたいものになれません。」
演劇とはなんなのでしょう。
なんなのでしょう、本当に。
演劇には無限の可能性があると聞きます。
舞台上は過去にも未来にも異国にも異世界にもなり得ます。
役者は異性にも人外にも生物以外にもなり得ます。
「別の誰かになる感覚」
それが役者をする上で快感なのだとよく聞きます。
わたしは今までそれを感じたことがありません。
別の誰かになろうとするたびに、自分がいます。
役に向き合おうとすればするほど、自分を感じます。
「その役は、もしかしたらなり得たかもしれない自分だと思っています」
誰かが言っていました。
そう考えると、無限の可能性は役者の中にあるのかもしれないなと思いました。
きっとこれはすごく感覚的なことで、他にも色んな演じ方やなりかたがあるのでしょうが。
演劇は嘘です。虚構です。
ですが、たまに現実よりも本当だと思う時があります。
あの子は、それを感じたことがあるのでしょうか。
もしかしたらないのかもしれません。
そんなことを考えた久々の稽古でした。