忽那・地獄の漢飯(おとこめし)act.2

これは、芝居と食に命を懸けるまんまるの漢達の情熱の記録である。

 

前回までのあらすじ「いき○りステーキ編」参照
元来食の好みも食べる量もジジイのそれと言われる
善良な愛媛県民・忽那は、徳島に行く度、
まんまるの漢達に無謀とも思える食事(漢飯)に誘われ続けている。

稽古と移動で身も心も枯れ果てた忽那の胃袋を漢飯は容赦なく傷つけ、
徳島に行く度幾度となく繰り返されるその地獄の苦しみから、
いつしか忽那は、徳島県をこう呼ぶのであった。

――煉獄、と。

 

 

今回の登場人物
丸山(38)

座長。漢飯界の熱き闘将。酒は飲めぬが麺は飲める。漢飯地獄の閻魔様。忽那の残飯処理係その1。ちょいポチャ。(写真左上)

うど(35)

副座長。漢飯界のファンタジスタ。食う量もすごいが食う速度もすごい、ファンタジスタとスピードスターの二冠王。忽那の残飯処理係その2。鬼ポチャ。(写真左下)

しんせい(23)

まんまるのヤングライオン。漢飯界のトリックスター。人類皆ラーメンが好きという強迫観念に襲われており、よく、故郷の四国中央市にあるという聞いたこともないラーメン屋へと忽那を誘うが勿論忽那に行く気はない。中肉中背。(写真右下)

晋作(19)

新入団員。漢飯界のスーパーノヴァ。およそ脳内に「躊躇」という概念がなく先輩のメニューに追随するノンストップ体育会系。スピードは遅いが若さ故か量は食う。中肉中背。(写真右上)

忽那(33)

俺。漢飯界永遠の補欠。食欲より酒欲が勝る。燃費が悪くすぐ腹は減るがスピード遅けりゃ量も食えない。味の違いもわからない。漢飯地獄の裁かれ人、被害者。誰か助けて。ヒョロガリ。(写真左上)

 

 

――2020年12月某日
四国劇王参加のため忽那の住む愛媛県を急襲し忽那の胃袋を破壊せしめた暴虐の徒、丸山、うど、しんせい、晋作。「い〇なりステーキ編」参照

彼ら+忽那は己を鼓舞し、競い、認め合い、劇王の戦いで酷く傷ついていた。

 

 

忽那(ああ、疲れた…そして酔っ払った)※忽那は常に二日酔いである
忽那(早く帰って、シャワー浴びて、軽くなにかつまんで、さっさと寝よう)
丸山:よし、じゃあ晩飯食ってから徳島に帰るか。
晋作:行きましょう!
しんせい:がるるるるる
うど:じゅるり(涎
忽那(やはりそう簡単に帰らせてはくれないか…しかしお腹が減っているのも事実…そしてこの流れは…皆も今回の戦いで疲れている…この流れは…軽くファストフードでも、と漢飯ルートは通らない可能性が高い…!)

 

丸山:今日の飯は…来〇亭だ!!!!
晋作:行きましょう!
しんせい:がるるるる
うど:じゅるりじゅるり(涎涎
忽那(〇来亭か…行ったことないな…しかしラーメンである…漢飯には違いないが…肉よりはマシだ…!)

 

忽那・地獄の漢飯「来来〇編」

 

忽那(ここが来〇亭か…派手な看板だな…)
学生街の一角にあるその店は黄色のネオンに彩られていた。
夜の帳に眩しく、そしてどこか懐かしい蛍光灯の明かりが灯り、店前にあるかなり年季の入った食品サンプルを照らしている。
そして漂う鶏ガラの香り。
食欲という名の猛獣をその身に宿す漢達が俄かに色めき立つ。※忽那以外

 

店内へ入る。
そこそこの賑わいを見せる店内、一層強まるラーメン臭、餃子を焼く音、他の客が頬張っている唐揚げ、そのすべてが漢達の五感を刺激する。※忽那以外

忽那(さて、店員さんは…なんだと、めちゃめちゃ可愛いじゃないか!)※マスク効果有り

 

席に着く一同。
ほぼ4名掛けに近しい6名掛け座敷に、「丸山・うどペア」と「忽那・しんせい・晋作トリオ」におのずと分かれテーブルを囲む。※冒頭の写真参照

忽那(座長とうどさんはデカいから、さらには年長組でもあるし、この並びは仕方ない…しかし…このスペースは3人で座るには…余りにも狭い…!)
忽那(どうやって座ればいいんだ…大人3人でこのスペースと考えると、全員であぐらをかいて座れば、必ず誰かがはみ出してしまう…最低でも誰か一人は正座、もしくはそれに準ずる座り方で生ずる幅しか占有できないことになる…年齢で言えば晋作、もしくはしんせいが先輩をたて正座するべきシーンだが…)

晋作「いやー腹ペコっす!」
しんせい「がるるるる」

忽那(な、なにィーーーー!!!!くっ…!こいつら、悠然とあぐらをかいてやがる…!す、座れぬ…!いくら俺が細くともこのスペースは座れぬ…!圧倒的早いもの勝ち…!こ、これが漢飯の暗黙のルール…!)
忽那(こいつらには先輩をたてるなどといった気遣いはないのか…!晋作なんて俺よりも14も年下なんだぞ…!)

忽那(いや…だめだ…!まんまるは…俺の愛する劇団まんまるは、年齢に関係なく意見を言い合える風通しの良い劇団を目指している…!こんな、平成を飛び越え昭和的な年功序列論は口にできない…!なにより…!気遣いの鬼である俺には…!…言えないよ…)※郷ひろみ

忽那(仕方ない、正座するか…ぐうっ…ダメだ、今日の激戦で俺の足に正座に耐え切るだけの力は既にない…仕方ない、片足は靴を履いたまま、テーブルの外、通路に出しておくか…)

 

 

忽那(そんなことよりメニューだ。流石にお腹ペコペコだ。今日は2回の本番に加え、塩むすび(具なし)2個しか食べてない…)

忽那(それもこれも忙しくて昼飯を買いに行く暇がなく、しんせいの彼女におつかいを頼んだせいだ…こいつの彼女が、おにぎり6個買ってきてと頼んだら1個いくら、5個塩むすび(具なし)を買ってくるしんせい以上のトリックスターだとわかっていれば…)※ほんまにありがとね

忽那(いくらは当然座長に取られるし…)

 

 

忽那(どれどれ…うーんどれも美味そうだ…初めての店だし、ここはモストポピュラーと思われるこの、ラーメン(冠なし)を頼んでおくか…唐揚げも食いたいな…おっ、Bセットだと、任意のラーメンに唐揚げと半チャーハンもを付けることができるのか…チャーハンも食いたいな…いいな…しかし…!いくら腹ペコとは言え、俺の胃袋にそんな容量はない…どうする…)

忽那(!?!?!?)

忽那(ラーメン小だと…?つまり小さいラーメンか…(ラーメン小+唐揚げ+半チャーハン)÷(忽那の胃袋x-塩むすび2個(具なし))の公式にあてはめると…)

忽那(…いける…!!!これはいけるぞ!!ラーメンも唐揚げもチャーハンも適度に楽しめる且つこの空腹を満足させるだけギリギリぴったりの案だ!多すぎもせず少なすぎもせず、完璧だ!完璧な計算だ!)※忽那は文系

忽那(あとは…俺が己の弱き心に負けず、漢達の圧力に負けず希望のメニューを頼めるかだが…その辺は前回のいきな○ステーキで学習済み、秘策がある…!)

 

 

店員「ご注文はお決まりですか」
忽那「はい!俺から注文します!!」
漢達「!?」

忽那(そう、俺の秘策、それは誰よりも先に注文するこど…!そうすることで漢達の圧力がかかる前にメニューを伝えることができ且つ店員さんに少食と思われる度合いをいくらか軽減できるというもの…!これで俺も、自分のスタイルに合った食事ができる…!さあ、ラーメンのBセットでラーメンを小にしてくれ、と注文するぞ…!)

忽那「すいません注文は、生ビールと、ラーメン(冠なし)のBセットで、ラーメンを…えっ!?」

※ラーメン小にセットはお付けできません

 

 

 

 

忽那(なにィーーーー!!!!小にセットは付けられないだと…!?なんてこった…見逃していた…不覚…こんな小さな文字で書いてあるとは…もうこれJARO案件だろ…)

 

店員「ラーメンのBセットでいいですか?」
忽那「は、はい…」

 

忽那(ああ、言ってしまった…メニュー再考という手もあったが、そうすれば店員さんに迷惑がかかる…なにより極限状態まで飢えている漢達が許しはしないだろう…やってしまった…)

 

丸山「○○ラーメンBセットで。」
忽那(まあ妥当な選択だな…座長ならペロリと平らげるだろう…)
うど「混ぜそばAセットで。」※Aセットは半チャーハンに唐揚げではなく餃子が付く。
忽那(混ぜそばか…よく知らんが漢飯っぽくぐちゃぐちゃしたそばなんだろうなあ…)
しんせい「○○ラーメン、大盛で。」
忽那(この流れでセットを付けないとは…さすがトリックスター…)
晋作「○○ラーメン、Bセットで。」
忽那(やはり先輩のメニューに追随してきたか…)

 

店員「かしこまりました。もうしばらくお待ちください。」
店員「SKトリプルお願いしまーす!」※厨房に向かって

忽那(SKトリプル…?なるほど、S=セット、K=唐揚げ、トリプル=3丁、つまりBセット3つということか、洒落てるな…)

晋作「SKトリプルってかっこいいっすね!」
しんせい「SKトリプルってなんなんだろうな」
晋作「これから僕のあだ名はSKトリプルにします!」
忽那(なに言ってんだこいつ…)

 

 

忽那の地獄は続く――※結局食いきれんくてしんせいに半チャーハンを、うどさんに唐揚げを食べてもらいました

 

 

 

おまけ
食事を終えた5人は順番にお会計を済ませ寒風吹きすさぶ店外へと出る。

晋作「ぐっ…あっ…ぎっ…!」
忽那(なんだこいつ…1人で悶えているぞ…)
晋作「食べてる間、ずっと座禅組んでたんで足が痺れて…歩けません…!」
忽那(なに言ってんだこいつ…)

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