劇団まんまる

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鐘の音か、鈴の音か2019/12/15

こんにちは。おげんきですか。
きょうは、思い出話をします。
題は、「ちりんちりんのおじちゃんのこと」。
 
わたしの家から小学校への通学路は、2つの道があった。
アスファルトで舗装された、交通量の多い車道。ツツジの植わった緑地帯があり、
そこにある歩道を通る道。
もう一つは、その道から並行に山側にある道。車道と歩道の境目もないような、住宅街を突っ切るような細い道。旧道と言われるこちらのルートは、登校時よりも下校時に使う道だった。
この旧道には誘惑が多いのだ。
道沿いに同級生の家がある、というのも一つ。
しかしそれ以上に魅力的なのが駄菓子屋の存在だった。
「ひゃっけんかえて」とおばちゃんにいうと、小さなポリ袋に10円玉を10枚重ねて入れたものうちの一つと、わたしたちが握りしめている100円玉を交換してくれる。
10円が10枚になることで、10円のものを10回選び、買うことができる。
糸引き飴だったり、占いチョコだったり、ブタメンだったり、そういうものを選んで、店内に置かれている卓型アーケードに座って食べる。
そんな駄菓子屋が2軒もあるのだ、その旧道には!
 
旧道にはほかにもぽつぽつとお店がある。
わたしが小学生の頃は髪を長く伸ばしていて、何かと赤い服を着せられていた。
オンナノコっぽいルックスではなく、おしゃれなんて心の底から興味がなかったので、せめて記号的にオンナノコを表現させてくれたのだと今となっては思う。
たいていはそんな母が髪を切ってくれていたけれど、いつ頃からか、旧道にある床屋のような美容院で髪を切ってもらうようになっていた。
母に連れられて行ったのだと思う。
知らないおばさんが髪を整えてくれた。
母は帰る頃にはいない。いつもの通学路、帰りは一人で歩いて帰れる距離なのだ。
お金は、ぴったり持たせてくれていたので、そのまま、おばさんに渡した。
 
ちりんちりん、と鐘の音が聞こえる。
おばさんが、わたしに100円を握らせてくれた。
「これでちりんちりんのアイス買うて帰り」
 
ちりんちりんのおじちゃん、といわれているおじちゃんが、その旧道をよく走っていた。
なんだか年中走っていたような気がするけれど、きっと主に夏だったのだと思う。
アイスクリンの容器を自転車に結えて、自転車の備え付けのベルではなくて、ハンドベルのような手で鳴らす鐘を「ちりんちりん」と鳴らしながらゆっくりと流しているのだった。
100円を渡すと、ピンク、はだいろ(と当時は言っていた)、緑のコーンにアイスをすくって乗せてくれる。コーンの下のほうまでしっかり詰めてくれるから、早く食べないと下から溶けた汁が零れてくる。
色の指定をしなくても、たいていピンクのコーンに入れてくれた。オンナノコだからだ。
この、しゃりしゃりとしたバナナ風味の氷菓がわたしは今でも大好きだ。
 
その床屋さんに行くのが楽しみになった。
「ちりんちりんのアイス買うて帰り」を期待していた。
おばさんは、きっと母がいるときには100円はくれないのだろうと思った。
母についてきてほしくないなあと思った。
きっとこれが最初の秘密だったようにも思う。
 
いつのまにか、その床屋さんには行かなくなった。
帰りに100円をくれることもなくなっていた。
もしかしたら物欲しそうな表情をしていたのではないかと恥ずかしくなった。
もう、ここには行きたくないと言った。
 
いつのまにか、ちりんちりんの音を聞くこともなくなっていた。
 
おしまい。
 
子供から、少女になり、大人になっていく。
むかし、その時々に享受していたものについて、よく考える。
考えている間にも、時は流れる。
思い出に生きようとした瞬間、自分を精一杯はたき倒したくなる。
こんな夏はもう来なくていい。
 
若い人たちには、精一杯生きて、その恵みを胸いっぱい享受してほしいと思う。
だけれど、歳を重ねてそれらを得られなくなったとき、そのときこそ自分の真価が問われるということも知っていられたら、なお良いとも思う。
 
まんまるは若い人が多くて、今を生きる彼女達に昔を投影してしまうことがある。
その傲慢な若々しさがまぶしい。
自分を追求してほしい、大人たちの玩具や道具にならないようにしてほしい。
 
若い頃にはこういった言葉が全てお説教にしか聞こえない、そのこともよく知っている。
こちらから見ればとても近い存在に思えるけれど、彼女らから見ればこの歳の差は別の生き物のような存在なんだ。
けれど何度でも言いたくなる。同じ轍を踏んでほしくないと思うからこそ。
 
なんて、また願いを託すのでした。
人に願いを託すのではなく、自分自身が行動しなければいけないのですが、、
またそれは別の話ですね。
 
さあ、前を向いて、明日に向かって、生産性のある日々を。
誰に決められるでもない、自分の人生を歩いていきましょう。

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